スパイダーマン(サム・ライミ版)

スパイダーマンTM BD

2002年
時間 121分
監督 サム・ライミ

ピーター・パーカーは科学好きな大人しい高校生。ある日、見学先で新種の蜘蛛に噛まれ、蜘蛛の能力を身に着けることになる。最初はその能力を自分のために使おうとするピーターだったが、伯父の死をきっかけにスーパーヒーローとして活動することを決意する。そんなピーターの元にグリーン・ゴブリンが敵となって立ちはだかるが…。

スパイダーマンも大好きな映画です。原作のアメリカンコミックは古くから知られているもので、日本でもアニメや実写版などで紹介されてきた有名なヒーローです。実は、子どもの頃に池上遼一の描いた「漫画版スパイダーマン」を見たことがありまして。掲載雑誌は忘れてしまったけど、確か連載第1回目で、主人公(なんと日本人の学生になっていた)が蜘蛛にかまれて特殊能力を身につけ、自分でヒーローの服を縫っていた(!)ところが印象に残っています。今作でもピーターはスパイダースーツを自分でデザインして作ってましたね。そう、スパイダーマンはそんな身近さを持つ、一味違うヒーローなのです。

歴史の古いヒーローの割には2002年にこの作品が出来るまでは映画化されてなかったみたいです!? 映画館には行けなかったので、レンタルで鑑賞した作品。とてもお気に入りになって、何回もレンタルして数回見返し、ついにはBDボックスを購入するに至りました。全体の構成がよく出来ており、主人公がヒーローをやるようになる過程が丁寧に描かれているので、無理なくスパイダーマンの世界に入っていけます。作りが素直に上手いなあ、と思う。切なさのさじ加減もよろしい。スパイダーマン自身もですが、敵(グリーン・ゴブリン)も共に人間ということが身近さを感じさせ、いかにも漫画っぽい設定ながらも感情移入できてしまうのが面白いところ。

スパイダーマンの「飛び方」はスーパーマンとは違って独特のアクションですが(蜘蛛の糸を放ちながらビルからビルへと渡っていくので、一瞬、体操の選手か!?と思ってしまう)、スピードとリズム感があって気持ちいいです。

それにしてもピーターくん、絵、上手いですね。あれだけ描けたらイラストレーターでも食べていけるぞ~と思ってしまったのは私だけか(笑。

<ネタバレ>

冒頭で「これはある女の子に関する物語だ」みたいなモノローグが入りますが、確かにスパイダーマンの物語であると同時にピーターとメリー・ジェーン(MJ)の恋の物語でもありますね。ピーターとMJは家が隣同士でピーターはずっとMJに片思いしてる。スーパースパイダーの能力を身に付けたピーターは手首から蜘蛛の糸を出したり壁を登ったり出来るようになり、その能力でアマチュアプロレスの賞金をもらいMJのために車を手に入れようとする。だが約束通りの賞金を貰えなかったピーターはアマプロに押し入った強盗を見過ごし、そのために伯父を失うことになる。

自分が悪を見過ごしたせいで伯父が殺された──これがピーターをスパイダーマンにする。悪を見過ごすことで更なる悲劇を生み出さないために。しかしヒーロー活動で忙しくしてる間にMJはルームメイトのハリーの彼女になってしまうのでした。スパイダーマンとしてMJを守るピーター、ピーターの親友でMJが好きなハリー、何回も自分を救ってくれたスパイダーマンに心引かれていくMJ、そこへハリーの父ノーマン・オズボーンがグリーン・ゴブリンとなって絡み、面白さと切なさが絶妙のバランスを保ちつつドラマが紡がれていく。

ノーマンのグリーン・ゴブリン化も丁寧に描かれていて、ノーマンが自分の中の"悪の誘惑"に負けていく様子もよく伝わってきました。ノーマンはパワー増強剤の開発に焦り、自ら実験台になるが副作用でもう1人の人格「グリーン・ゴブリン」が誕生してしまう。水面下の欲望がむき出しになったグリーン・ゴブリンにノーマンは取り込まれてしまい、正義を行うスパイダーマンを敵と見なすようになる。

グリーン・ゴブリンにスパイダーマンの正体を見破られてしまうピーターだが、グリーン・ゴブリンの正体がハリーの父だと知った時のピーターの衝撃も大きかったろう。結果的にグリーン・ゴブリンは自滅してしまうのだけど、彼の体を家へ運んだところをハリーに見られてしまい、ハリーに「父はスパイダーマンに殺された」と誤解されることになる。だがハリーはピーターがスパイダーマンであることは知らない。そこにピーターが背負う"ヒーローの意味と切なさ"がある。

大いなる力には大いなる責任が伴う。

ピーターの伯父の言葉、今作を代表する名言です。ラストでMJは自分が本当に好きだったのはピーターだと気付くけど、ピーターは恋を諦めてヒーローとして生きる道を選ぶ。伯父の言葉を噛みしめながら。

でもMJ、キスで気付いたよね、ピーターがスパイダーマンではないかと。さりげない余韻の残し方がいいです。