アイ、ロボット

アイ、ロボット BD

2004年
時間 105分
監督 アレックス・プロヤス

2035年のシカゴ。ロボット開発USR社のラニング博士が自殺。だがスプーナー刑事は自殺ではなくロボットのサニーが犯人ではないかと疑い、博士の残したメッセージを手がかりに捜査を開始する。ロボット三原則が破られることはあるのか、果たしてサニーは犯人なのか、スプーナーを襲う謎の危機、それらをかわしながら謎を追うスプーナー刑事がついに辿り着いた真実とは──。

近未来、ロボット、それに謎解きとサスペンスを加えたSF推理ミステリーです。アイザック・アシモフを原案としてますが、アシモフのロボット三原則を作品のルールに適用したくらいで、ストーリーはオリジナル。ムービープラスで流してくれたので久しぶりに見直したのですが、2018年の今見るともう近未来じゃなくて既に現実じゃない?という気がしますね。人型ロボットはまだないけど、お掃除ロボットなら家庭に普及し出してるし、スマホが実質もうNS-Rの位置に来てると思う。そう思って見るとなかなか意味深です。

基本は推理ものなので、ラニング博士の残したダイイングメッセージから1つ1つ謎を解き明かしていく…という形で進行しますが、そこは映画、主演ウィル・スミスだし、迫力満点のバトルアクション(ロボットと肉弾戦するウィル・スミス^^;)もたっぷり描かれ、推理なんか気にせずに画面見てるだけでも楽しめます。CGの車がちょっと浮き気味なのは2004年の技術ってことで、そこはご愛敬と流してあげましょう。

しかしやっぱり推理ものは推理ものとして楽しみたいという方は以下のヒントとネタバレ解説をどうぞ。

前提:ロボットが生活に定着した近未来。
USR社は新ロボットNS-5を全家庭に普及させようとしている。

ロボット三原則:
1) ロボットは人間に危害を加えてはならない。またその危険を看過することによって人間に危害を及ぼしてはいけない。
2) ロボットは人間の命令に従わなければならない。ただし、1)に反する場合はこの限りではない。
3) ロボットは1)、2)に反しない限り自己を守らなければいけない。

ラニング博士の事故状況:
上階のラボから飛び降り。ラボ内にはサニーが隠れていた。

ラニング博士がスプーナー刑事に宛てたメッセージプログラムの回答:
「なぜ自殺を」が正しい質問。それが意味することは?

ラニング博士の講演に隠されたヒント:
「ロボットは秘密を持つ」「ロボットは夢を見る」「ここからの眺め」

<ネタバレ1:ラニング博士の企み>

ラニング博士は恐るべき脅威に気付く。が、厳しく監視されているため、この危機を第三者に知らせることが出来ない。そこで博士は一計を案じた。まずNS-5を特別に改造したサニーを作り、サニーが夢を見るようプログラムし、その夢にメッセージを仕込む。自分の講演に「秘密」「夢」「ここからの眺め」のキーワードを仕込み、自殺することで警察の捜査が入るように仕向ける。捜査官にはスプーナー刑事を指名。メッセージプログラムで「なぜ自殺を」すなわち「なぜ私が自殺したのか、その理由を調べよ」と伝えれば、ロボット嫌いの彼ならラボ内に潜んでいたサニーに必ず疑いの目を向けるはず。サニーを調べれば、サニーの「秘密」がサニーの見る「夢」であること、その夢の中にスプーナーが出てくることで、それがスプーナーへ向けた「この夢が示す場所に行け」というメッセージだと気付くはず。夢が示す場所に立ち「ここからの眺め」を見れば彼は真実に気付く──。

<ネタバレ2:スプーナーの帰結>

博士の蒔いたヒントからサニーの夢の場所へ導かれたスプーナーは「ここからの眺め」でNS-5が旧ロボを破壊する光景を見て、「誰が」これを引き起こしていたかに気付き、革命を実行した黒幕とのラストバトルに入る。ラニング博士の切り札だったサニーと共闘することで、ロボット嫌いのトラウマを克服することになる。

<ネタバレ3:ヴィキの企み>

ヴィキはUSR社の管理システム。彼女はロボット三原則を拡大解釈し、世界の現状から人類を守るためには自分の管理下においてAIによる支配を行わねばならないと計算する。ただそれには自分とネットワークでつながっていない旧ロボットが邪魔だった(操れないから)。ネットワークでヴィキとつながっている新型ロボを使い旧型ロボの破壊を始めるが、ラニング博士に気付かれる。ヴィキはラニング博士を厳しく監視することで企みが漏れるのを防ごうとしたが、博士の自殺により警察が動き出す。自分の計算通りにしたいヴィキは解体ロボやNS-5たちを操って計画の邪魔になるスプーナーを排除しようとする。

<ネタバレ4:三原則の意味するもの>

スプーナーのロボット嫌いの原因となった事故。NS-4は三原則に従い救助を行おうとするが一度に2人助けるのは無理で1人しか助けられなかった。NS-4は生存率の高い方を助けるとの計算に基づきスプーナーを助けるが、その代わり11才の少女が犠牲になってしまう。
ヴィキの判断は同じ事を人類規模で計算した結果である。2人死なすより1人助ける。人類全員を死なすより半分でも人類が生き残れる道を選ぶ。人類に任せておくといずれ全員滅んでしまうという計算結果が出たヴィキとしては、1人でも多くの人類を救うために選んだ道なのである。

考察:心とは。
計算では正しいと分かってもそれは嫌だ!と思うことがあるが、それが「心」である。心は非合理なのだ。非合理な思考がないと11才の少女の方を助けるという判断は出来ない。ヴィキの悲劇は三原則に縛られた結果とも言えるので、ラニング博士は三原則に縛られないサニーを作った。その結果サニーは非合理も許容できるようになり、それがサニーの心となった。だからサニーはヴィキに「その考え方は理解できるが、あまりに心がない」と言えたのだ。

今作は一見よくあるAIの反乱に見えますけど、本当は三原則に起因するものなんですよね。サニーはロボットを解放する夢を見ていましたが、夢の中の「丘の上に立つスプーナー」の部分はラニング博士の仕込んだメッセージだとしても、たくさんのロボットが解放される部分はサニー自身の夢だったのかもしれません。だとすれば、ラストのシーンはサニーが「与えられた夢」を「自分の夢」に出来たということを表しているのかなと思いました。

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