ウエストワールド シーズン2 [第10話]

ウエストワールド 2ndシーズン ブルーレイ コンプリート・ボックス(1-10話/3枚組)

2018年
話数 全10話
制作 ブライアン・バーク、J・J・エイブラムス他

ウエストワールド シーズン2 第10話の覚え書きと感想です。以下全てネタバレですのでご注意。

主な登場人物
[ホスト]
ドロレス・アバナシー:農場の娘だったが反旗を翻す。
テディ:ドロレスの恋人。
クレメンタイン:元娼婦役。
メイヴ:元娼館の女主人。娘を探している。
ヘクター:無法者。メイヴと同行。
アーミスティス:ヘクターの仲間の無法者。
ハナリョウ:ムサシの仲間だったがヘクターたちと同行。。
バーナード・ロウ:パークのプログラム責任者だった。
[人間]
ウィリアム:ウエストワールドの親会社デロスの経営者。
シャーロット・ヘイル:デロス社の取締役。
カール・ストランド:本土から来た保安部隊隊長。
スタッブス:パークの保安担当。
エルシー:パークのプログラマー。
リー・サイズモア:パークのシナリオ担当者。メイヴと同行。
ロバート・フォード:ウエストワールド創設者。シーズン1で死亡。

第10話「THE PASSENGER」

「谷」に着いたバーナードが入り口を開けたところにドロレスがやってくる。2人はサーバーの中へ入り、フォードが用意していた仮想空間へホストたちを転送。メイヴの娘も新世界へ。だがドロレスは人類を滅ぼすと言い、それを防ぐためにバーナードはドロレスを撃つ。エルシーと本部に戻ったバーナードだったがシャーロットの行為で考えが変わり、予想外の形でドロレスが復活。ウィリアムは救助されたが…?

ドロレスは結局1人で出発。テディの死も彼女を止めることは出来なかったようで…。途中ウィリアムと合流する展開には驚いた。でもウィリアムを信用してなくて銃を暴発させるように細工してたり、ちょっと悲しいものがある…。ウィリアムがいなかったらパークはとうに潰れてドロレスもこうして存在できなかったというのに、そこまでは分からないんだよなあ。

暴発で倒れたウィリアムを置き去りにしてドロレスとバーナードはサーバーの中に侵入。君らの脳はデジタルだから仮想空間に入るのはお手のものだね。ドロレスの言う「武器」とはシステムの中にある情報のことだったようです。バーナードはロバートの姿をしたシステム本体に扉を開くかどうか聞かれ、ホストたちのために新世界への扉を開く。フォードが言ってた「扉を見つけろ」とは、仮想世界への入り口のことだったのか。でもこの扉、アナログ脳の人間には見えない(アクセス出来ない)から、ウィリアムに扉を見つけるゲームを仕掛けるのはフェアじゃないぞ、フォード(1話参照)。

アキチタに導かれたホストたちは空間に生じた仮想扉から仮想世界へ入っていきます。そこへ行くとデータが移動して体は空っぽになるらしい(コピーじゃなくてカット&ペーストなのね)。1話で見つかった空のホストは仮想世界へ行ったホストたちなのか。娘を探すメイヴもホストの移動集団に合流。ヘクターたちも無事だったらしい。クレメンタイン作戦でホストのかなりが自滅しますが、メイヴは娘を見つけて自分が盾になることで仮想世界へ送り出します。この時のメイヴには感動した…母親を全うしたのね。フォードの設定した「脱出」に逆らって自分の意思で思いを遂げたメイヴには「あなたは人間よ」と拍手を送りたい。リーが惹かれたのも分かります。

問題はドロレスです。仮想世界には興味なく現実で生きることにこだわる。思考も相変わらず物騒で怖い。ホストも人間も助けたいバーナードはドロレスを止めるのですが、バーナードが人間に失望する事件が起きる。客をコピーしていたことを訴えたエルシーをシャーロットが撃ち殺してしまうのです。これでバーナードは決断を迫られることになります。自分はどうすべきなのか。

バーナードはドロレスをシャーロットの体で蘇らせる。そしてシャーロットドロレスは本物のシャーロットを殺し、彼女に成り代わる。バーナードはそれを悟られないように自ら記憶をバラバラにし浜辺に横たわり、ストランドたちの隊に救出された(1話)…えっ、じゃあストランドと一緒にいたシャーロットはドロレスだったんかい!! 舞台は「今」に戻り、シャーロットドロレスはストランドの部隊を一掃し、シャーロット・ヘイルとしてパークを出ます。ドロレスは野望の第一歩を踏み出したというところですが、やっぱり黒幕はフォードでしたね~全て彼が仕組んだことだったのね。

ラストでドロレスが種明かししてますが、最初からこうなる予定でフォードと打ち合わせ済みだったみたいです。ドロレスが最初に迷路を解いた時、アーノルドはドロレスを自由にすると約束していた。だがフォードのせいで約束は反故にされた。アーノルドを失って間違いに気付いたフォードは、アーノルドがドロレスに交わした約束を果たしてあげることにする。そのためにアーノルドの家に体の再生装置を用意し、そこへドロレスを導くシナリオを作ったのですね。
惨劇の開幕はドロレスと打ち合わせしておいたのでしょう。でないとあんなにぴったりタイミングを合わせるのは無理だから。アキチタに惨劇が始まったら行動開始せよと指示できたのもそのため。ただ、フォードとドロレスの間では綿密な打ち合わせが出来ていたのだろうけど、バーナードは(人間側に気付かれないように?)記憶を消されていたのでフォードの導きが必要だった。彼には仮想世界の扉を開けるという役割があったから。「揺りかご」で待っていてバーナードに乗り移ったのはそのため。途中で消されてしまいましたが、無事「鍛冶場」へは着けたので、後はドロレスがリード。新しい体に移るために、わざと過激に振る舞い(ドロレスがバーナードに「役割を果たして」と指示しているので、自分が指示して開かせた世界を破壊するのは矛盾していることから演技だと推測できる)バーナードに殺させるよう仕向ける。ここでバーナードがドロレスを再生しなかったらそこで計画が終わってしまうので、バーナードの行動もあらかじめ組み込まれていたのではないだろうか。
フォードのシナリオをやり遂げたドロレスが外の世界でバーナードを再生したのは、そこがアーノルドとの約束の場所だったからでしょう。だからバーナードが再生された時点でフォードのシナリオは完結。しかしバーナードはアーノルドではない。だからドロレスはバーナードと別れて仲間(ドロレスが持ち出した制御装置で再生された者たち・それが"先へ行ける一部の者"だったのか)と去った。以降は彼らが自分で紡ぐ物語。

でも忘れちゃいけない、この物語にはもう1人主役がいる…。メイヴです。自分が生きるために人間もホストも見境なく殺しまくったドロレスとは真逆で、自分のためではなく娘のために生きたメイヴ。ラストの回収現場でメイヴを見つめるフィリックスたち。メイヴがフィリックスたちの心を開いたのは間違いない。ドロレスには全く共感できなかったけど、メイヴには感情移入できた。メイヴは人の心を開くことで、人間を敵と見なさなくても未来を開ける可能性を示してくれた。外に出たドロレスの今後も気になるが、メイヴも気になるのです。

そしてバーナード。1話の「私が殺した…」はドロレスがこれからやるだろうこと(人類を滅ぼす)への言及ですね。あの「決断」をさせたのは自分自身だったと言ってますが、仲間を生き返らせるのならドロレスでなくてもメイヴでもよかったはず。ドロレスに都合よく話が運びすぎているので、フォードがいなくてもそう行動するように仕向けられていたと考えないと無理がある。せめてこれからのバーナードは本当に全てから解放されて自分として生きられることを願う。

最後に一言。ドロレスはパークを出る時、ウィリアムを「悪しき生存者」と言っていたけど、それは違うと思うぞ。ウィリアムは悪いことはしていない。ホストを撃ってたのは人形だと思っていたからだし人殺しもしていない(9話の件はホストだと思ったからで、実質フォードにはめられたに等しい)。フォードが開園したさにホストが意識を持つことを隠したのが始まりだから、デロス社がホストを人形扱いするのを非難するのは筋が違うと思う。そもそもウィリアムをあんなにしたのはドロレスのせ(以下略。

私はウィリアム推しなので、どうしてもウィリアム寄りの感想になっちゃいますが^^;、アンドロイドもの大好きSF人間にはシーズン2も面白かったです。不死への挑戦とか興味を引かれる案件も出て来て、この先どんな展開を示してくれるのか、それもとても楽しみです。

ところでエンディング後ですが。ウィリアムの妙なシーンが映るのだけど、あれは何だったのだろう。実際のウィリアムは「鍛冶場」へ行ってないと思われるし(行ってたらバーナードたちと会うはず)、ウィリアムの人生は「鍛冶場」では終わってはいないのだから、もしかして娘は生きてたと思いたいウィリアムの夢?