ウエストワールド シーズン1 [第10話]
年 | 2016年 |
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話数 | 全10話 |
制作総指揮 | ブライアン・バーク、J・J・エイブラムス他 |
ウエストワールド シーズン1 第10話の覚え書きと感想です。以下全てネタバレですのでご注意。
主な登場人物
[ホスト]
ドロレス・アバナシー:農場の娘。
テディ:ドロレスの恋人。
メイヴ:娼館の女主人。
クレメンタイン:メイヴの娼館で働く娼婦。
ヘクター:無法者。
アーミスティス:ヘクターの仲間の無法者。全身に蛇の入れ墨がある。
[ゲスト]
黒服の男:ウエストワールドに30年通っている。
ウィリアム:ウエストワールドに訪れた若い客。
ローガン:ウィリアムの友人でウエストワールド常連客。
[管理側]
ロバート・フォード:ウエストワールド創設者。
バーナード・ロウ:パークのプログラム責任者。
フェリックス:パークの技術者。メイヴと接触。
シルベスター:パークの技術者。メイヴと接触。
リー・サイズモア:パークのシナリオ担当者。
スタッブス:パークの保安担当。
シャーロット・ヘイル:デロス社の取締役
第10話「The Bicameral Mind」
アーノルドとの記憶を行き来するドロレスに迷路の答を迫る黒服の男。愛するウィリアムが来てくれるからと抵抗するドロレス。だが黒服の男はウィリアムのことを知っていた。彼がどうなったのかも…。管理側に来たメイヴはヘクターたちを解放し、低温倉庫で倒れていたバーナードを復活させる。対策班の相手はヘクターたちに任せて外へ出る列車に乗るメイヴだが…。フォードは役員たちの前で新シナリオを発表。そのシナリオにはフォードの計画も秘められていた。そして迷路をクリアし、本当の自分に行き着いたドロレスは"自分の意思"で銃の引き金を引くのだった──。
シーズン1最終話。ドロレスとアーノルドの謎が明らかになります。子どもを亡くしたアーノルドはホストで"息子"を再現しようとし、心を持つアンドロイド開発に力を入れた。「迷路」はホストに意識を芽生えさせるための共感力と表現力のテストだった。ドロレスは迷路をクリアし、意識を持つ。だがアーノルドは死なないホストたちに意識を持たせるのは苦しませるだけだと気付く。ホストたちのために開園を反対するアーノルドと開園が夢だったフォードは衝突。アーノルドはワイアットというシナリオでホストたちを全員殺させ、自らも自殺(ドロレスに殺させた)という形で開園を止めることにする。ホストは再生出来ても人間は無理。自分がいなくなったら園は続かない──。それでもフォードは何とか開園にこぎ着けるが、資金不足で園は潰れかかる。それを救って園を続けさせたのが黒服の男だった。
ここで衝撃の事実が明らかになります。黒服の男はウィリアムを知っていた。ドロレスをローガンから逃し、愛するドロレスの行方を探しに出たウィリアムはどうなったのか。彼はドロレスを探し続けた。探して探して園の端まで行った。だがドロレスは見つからなかった。そしてやっと彼は最初の町で缶を転がすドロレスを見つける。だが彼女は彼の愛したドロレスではなかった。彼女はウィリアムのことを覚えていなかった…。そして失意のウィリアムは真っ黒な帽子を被る──黒服の男こそウィリアムだったのだ。彼はウィリアムの30年後の姿だったのだ──。
うあああああ!! あの真っ白で純真だったウィリアムが! 優しくて慈悲深くて心からドロレスを愛していたウィリアムが! 30年の歳月が彼を変えてしまった。ウィリアムはドロレスに会い続けたのだろう。だが彼の恋が実ることはない。ドロレスはウィリアムを忘れ続ける。ウィリアムの純真な愛はホストという現実の前に砕け散ったのである。この時、私の中で黒服の男の印象が180度ひっくり返った。彼にとっては何という残酷な歳月だったろう…。ドロレスに罪はない。ないけど、彼を真っ黒に染め上げたのはドロレスだ。彼はデロス社の最高経営者だった。彼がウエストワールドを買って窮地から救い存続させたのはドロレスのためだった。彼女が「この世界が大事」と言ったからだ。
10話でこのお話は私にとっては「ウィリアムの物語」になりました。アンドロイドの自我とか、バーナードがホストだったとか、それもアーノルドがモデルでしたとか、そんなのどーでもよくなるくらい大きな衝撃で心に突き刺さりました。歳月の残酷さを描く作品として見たらすごく秀逸。過去出会った物語の中でも最高の部類に入りますね。凄い作品に出会えてよかった。
ということで、すっかり「黒服の男推し」になってしまった私ですが、これで感想を終わったら今作が本来描きたかったテーマや謎を放り投げることになるので、ちゃんと最後までやりますね(^^;。
ドロレスは記憶を消されてループを続けるが、アーノルドの記憶の断片が迷路探しをさせる。ドロレスは無意識にも繰り返し迷路に挑戦していたのだと思われます。ウィリアムと旅していた時もドロレスは過去の記憶を辿り続けていた。で、10話で判明したんですけど、ウィリアムと一緒なのは30年前の記憶。実に巧く現在と過去が入れ代わりながら描写されていたのですっかり騙されていたのですが、逆だったんですね。4話でループを外れたのが現在。ドロレスはウィリアムのことを思い出しながら1人で同じルートを辿っていたのだと思われます。汽車の箱の上に迷路が出ていたのが現在。ウィリアムとローレンスが一緒にいるシーンが回想。お腹に傷があるはずなのに消えていたのは傷は回想で、傷がないのが現在だから。保安官がウィリアムが来た時はユニオン軍だったのも30年前と今では役が違っていたからか。
ドロレスの「故郷」は開園前の試験場ですね。そこに白い教会があった。ホスト皆殺しとアーノルドの自殺があったのもそこ。その記憶が繰り返しドロレスに蘇っていたのですね。試験場はウィリアムと訪れた時は教会の残骸だけを残して砂に埋もれていた。現在はフォードが掘り返して作り直した町があり、そこでドロレスと30年後のウィリアムが会う。
開園の夢を諦められないフォードは無理にでもオープンしたけど、アーノルドが予見したように記憶を消してもホストたちにはまた意識が芽生える。苦しみがホストたちを目覚めさせるのだ。やっと自分の間違いに気付いたフォードはホストたちを救うために新しいシナリオを用意する。それはホストが自分で決断を下しその結果何者になるのかという物語。そして迷路を完全にクリアし、自分自身と出会えたドロレスは自分の意思でフォードを撃ち、客たちに銃を向ける。これはフォードのシナリオ通りの展開になった(自分が殺されること想定済み)と考えていいのかな?
メイヴは自分の意思で動いていたように見えたが、何者かに「脱走」というプロットを仕込まれていた。そのプロットでは外へ行ってから何をやるのかも書かれていたが、自分の意思で動いていると思いたいメイヴがタブレットを割ってしまったので、何をやる予定だったのかは不明。結局メイヴは母娘連れを見て外へ行く列車を降りるのだけど、誰がメイヴに色々細工したのかはシーズン1ではまだ不明なままです。
フォードの演説中にリーがアバナシーを連れ出しにこっそり低温倉庫へ行くけど、そこは空っぽだった…。そういえばエルシーを探しに行ったスタッブスが先住民のホストに襲われてたっけ…。そしてパーティにいたウィリアムの前に現れた人影たちは…?
こんな面白い作品に出会えたのも久しぶり。みごとな構成力ですごく楽しませてもらいました。チラッと日本の武者たちみたいなホストがいる一角が映ったのも気になる。シーズン2も楽しみになりました。