バタフライ・エフェクト
年 | 2004年 |
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時間 | 114分 |
監督 | エリック・ブレス |
エヴァンは子どもの時に度々記憶がなくなることがあり、医師の勧めで日記を書くようになる。大学生になったある日、子ども時代の古い日記を読むと読んだ時間に戻れることを発見。長馴染みのケイリーの不幸を防ごうと過去に戻るが、ケイリーが救われた代わりに恐るべき事件が起きてしまう。その事件をなかったことにするため過去に戻るが過去改変を繰り返す度に事態はどんどん…? タイムトラベルミステリー。
タイムトリップものでは傑作に入るのでは。最初はなくした記憶が戻っただけと思うエヴァンだけど、子ども時代に戻った時に「あの時こうすればよかった」と思うことをやったら、元の時間に戻った時に過去が変わっていてびっくり、あれは思い出したのではなくタイムトリップしていたんだ!と気付くわけですね。
今作では意識だけが過去に戻るので、大人のエヴァンが子どものエヴァンに出会うみたいなパラドックスは起きません。時間を巻き戻したみたいな感じかな。今の時間に戻ると改変された時間が一気に早送りで脳に再生されるので、改変後も矛盾は生じない。しかし1つ過去を変えると、それに応じてその後の流れも変わり、エヴァンだけでなく周りの人たちの人生も変わる。それがバタフライ効果。エヴァンが過去で何かする度に幼馴染みのケイリー、ケイリーの兄のトミー、レニーたちの運命も様々に翻弄されてしまう。
それでも歴史をいい方向に変えたい気持ちは分かる。あの時こうすればと分かっていて、それが出来るとなればどうしてもやっちゃう。望む結果が出なかったら、理想の結果を出すまではと繰り返し頑張っちゃう。色々なバリエーションを体験するも、あちらを立てればこちらが立たずとなかなか上手くいかない。ついにエヴァンはある決意をするのですが、それは果たして…?
<ネタバレ>
最初の改変ではケイリーは救えたが、その分トミーがケイリーの分まで不幸を背負い、その影響がエヴァンにまで及ぶ。しかしトミーが少年院に入らないようにしようとしたら、その代わりにレニーが罪を…。レニーを救おうとしたら、その代わりに自分が障害者になりその影響で母も不幸に。トミーを根本から救おうとしたら、その代わりにケイリーが犠牲に。何をどうやっても誰かが不幸になる。
子ども時代の記憶飛びは、未来の自分が体に入ってる間の記憶が飛んでいたということですね。実はエヴァンの父も同じだった。過去に戻る度に新しい記憶が再生されるので脳にも負担がかかり、エヴァンは父と同じようになってしまう。ここでエヴァンは大きな決意をする。これがとても切なくて泣ける。
ケイリーの不幸の根源は父親からの虐待。ケイリーの両親が離婚した時、母親についていけば父親の虐待の運命から逃れられ、ケイリーだけでなく兄のトミーも救われるはずだった(トミーが元から駄目人間でないのは障害者バージョンで示されている)。だがケイリーは初恋の人(エヴァン)の側にいたいため、父親を選んでしまった。その運命を避けるためにはエヴァンが初恋の人にならなければいい。つまりケイリーに母親を選ばせるために、敢えてエヴァンは彼女に嫌われるように振舞ったのです。好きだったケイリーのために。
エヴァンとケイリーが縁を結ばないバージョンでは不幸は訪れなかった。エヴァンは大学の寄宿舎で同室になったレミーと一緒に過去の日記を焼き捨てる。もう過去改変は行なわない。ラストで8年後にエヴァンとケイリーはすれ違うシーンがありますが、余韻を残すいいラストだったと思います。
エンディングの違うバージョン
今作のラストにはディレクターズカット版としていくつか違うバージョンがあるようですが、「エヴァンが産まれないことを選択する」だけは一番やっちゃいけない駄目バージョンだと思う。死で解決してはいけない。死なずに最善の道を探るからこそ意味があるのに。前述した通りケイシーの不幸の根源は父親の虐待だから、それさえ回避できたらエヴァンが死ぬ必要は何処にもないんですよ。劇場公開バージョンで十分目的は果たせているのだから、敢えて不必要なことをやる理由はどこにもない。これを公開版にしなくて正解だったと思います。