大怪獣のあとしまつ

大怪獣のあとしまつ 豪華版 [Blu-ray]

2022年
時間 115分
監督 三木聡

日本を襲った大怪獣が死亡した。のはいいのだが、あとには大怪獣の死体が残り、その後始末に苦慮することになる。政府が対応に迷走する中、大怪獣の体内で腐敗によるガスが発生し大爆発する恐れが。この大きさで爆発されたら新たな災害となる。政府直轄特殊部隊(特務隊)のアラタは後始末の責任者に任命され、爆発を防ぐために奔走するのだが…。

何か話題になっていたようなので見てみたいと思ってましたが、やっとレンタル出来ました。ネットのネタバレや感想の詳しい内容も(敢えて)知らないまま見た者の感想です。

期待通り、実に面白い発想だと思いました。怪獣が死んで巨大な死体が残ったら…!? そりゃ対応に苦労するでしょうね。怪獣の死体が残るという部分はリアルに描きながらも、政府の対応は面白可笑しくこっけいで、風刺や皮肉、過去の怪獣映画のパロディみたいなのも混じってたりして、要するにコメディ仕立ての喜劇。これは風刺やパロディを笑って楽しむ作品だと思いました。

今作の工夫は「ハリウッド怪獣映画みたいな予算はない」「怪獣キャラクターの権利もない」状態で、これまでとは違う視点から怪獣を描いてみたと言うところでしょうか。怪獣アクションはすっ飛ばして死体から始める、怪獣は既に死んでいるから人間たちのドラマが中心になる、シリアスは「シン・ゴジラ」でやってるからか今作ではコメディに振るなど、まともな怪獣ものを期待した人には「なんじゃこりゃ」だったかも知れませんが、個人的にはこの制約の中でよく頑張ってくれたな、という思いでした。

登場人物の人間関係がちょっと分かり難かったのが惜しかったかな。実はこの人間関係がポイントになっているので、アラタとユキノと雨音(ユキノの夫)の関係と過去のいきさつは把握しておいた方がいいです。と言っても恋愛とかそういう方面じゃない、もっと重要なキーが隠されてますので。このおかげで最後まで見たら、後始末のドタバタがメインと見えて実はしっかり怪獣ものだったことが分かるので。

<ネタバレ>

3年前までアラタ、ユキノ、雨音の3人は特務隊に所属していた。だが謎の光を追跡中に光に飲まれたアラタはユキノの前から姿を消してしまう。その時ユキノと同乗していた雨音が足を負傷し、そのことからユキノは雨音と結婚することに。だがユキノの心の中には姿を消したアラタへの気持ちも残っていた…という前提。そして3年後、総理秘書官になった雨音と環境大臣秘書になったユキノの前にアラタが姿を現す。ユキノはアラタがなぜ姿を消したのか、その理由を知りたがっていたが、アラタはなかなか理由を打ち明けてくれなかった。

…とくれば3角関係みたいですけど、ポイントはそこではなくて、3年前の謎の光が何だったのか、それがアラタにどういう影響を及ぼしたのか、怪獣を倒した謎の光の正体へとつながっていくわけです。正直、怪獣の後始末のドタバタものだと思って見ていたので、それ以上のことは何も期待していなかった。怪獣を倒した謎の光についても単なるご都合主義で説明なんかなしで終わるのだろうと思っていた。一応、雨音が光の正体について調べるシーンはあるものの、そういうシーン入れてみましたポーズ、くらいに思ってたので、まさかあそこで、、、

ウ ○ ○ ○ マ ○ …!???

そういうことだったのか!! アラタが変身ポーズをとって光を発し巨大化したのは分かった。が、巨大化したアラタがどういう姿なのかは分からない。しかし怪獣やウルトラマンを見て育った者ならすぐ思いつくだろう、3年前光と合体したアラタはウルトラマンのようなヒーローになり、それ故ユキノの前から姿を消したことを、怪獣を倒した光がアラタの変身した巨大ヒーローだったのだと言うことを。

ウルトラマンの権利を持ってないからウルトラマンは出せない。だがこういう形でウルトラマンのようなヒーローを描くことなら出来る。変身後の姿をハッキリと見せないのは見た者の中で補完してくれることを期待していたのではないか、ウルトラマンだと思いたい人はそう思ってくれればいいと。私としてはウルトラマンを出せない状況でよくぞ出してくれました、としか言いようがない。ちなみに今作ではウルトラマンと言えない代わりに「選ばれし者」という言い方をしてました。

世間の評判はどうあれ、発想がよかったのと、ゴジラもガメラもウルトラマンも使えない制約の中で今までにない視点で怪獣VSヒーローを見せてくれたことで、私は好ききです、この作品。