ターミネーター3

ターミネーター3 BD

2003年
時間 109分
監督 ジョナサン・モストウ

T2から10年後。「審判の日」は回避されたが、青年になったジョンは未来への不安が拭いきれず逃げ回る日々を送っていた。その不安が的中したかのようにまた未来からターミネーターがやってくる。スカイネットの誕生は阻止できなかったのか!? T-1000を上回る性能のT-Xは未来の反乱軍メンバーを次々に抹殺。そのターゲットにはジョンの幼馴染みのケイトも入っていた。ジョンとケイトを守るために派遣されたT-850とT-Xの死闘がここに開始される。

公開時に子どもたちと映画館で鑑賞。リアルタイムのターミネーターを知らなかった子どもたちも念願の映画館での鑑賞!でした。親子二代で見られる映画はスター・ウォーズだけではないっ。それを考えると今作が作られてよかったと思う。確かにあの美少年ジョンがこんな大人になる!?てのはあったけど、子どもたちは映画館の大スクリーンでシュワちゃんを見られたのですから。

さて、今作が目指したものは? T2の感想でラストの解釈は二通りあると書きました。スカイネットはやっぱり生まれるのか。それともスカイネットが生まれない平行世界になったのか。平行世界ならいいのですが、もしそうでなかったら…?

冒頭のジョンは10年前のあの少年とは思えないほどの情けなさぶりを発揮していましたが、ジョンの気持ちも分からなくはない。スカイネットが生まれなければカイルが未来から来ることもなくジョンは産まれていないはず。未来が変わったなら消えてもおかしくないはずの自分が存在し続けていることへの不安もあったのではないか。ジョンがスカイネットの悪夢を見続けるのは、自分の存在それ自体がスカイネット存在の証しになっているからかもしれない。

幼馴染みのケイトがT-Xに襲われ、ジョンとケイトの前にT-850が現れ、「審判の日」は延期になっただけだと告げられる。ジョンは再びスカイネットの誕生を阻止し、「審判の日」を回避しようとしますが…。

T-Xは女性型でこれもなかなかに怖かった。T-1000とは違って金属骨格を持っており、表面を液体金属で覆うという構造。流動はしないけど、似た体格(大人)なら誰にでも化けられる。公開当時(2003年)のIT状況に合わせてハッキング能力も持ち、遠隔で他のマシンを動かすことも出来る。骨格があることでT-850(シュワちゃん型)とのガチの肉弾戦も行える。CGはもう十分なレベルで満足。カーアクションも迫力増し。映像方面には不満はありません。

<ネタバレ>

スカイネット誕生は阻止できてはいなかった。ターミネーターの痕跡がなくても、それならそれで別の誰かがゼロからスカイネットを作る。どこをどうしても結局スカイネットは生まれる。何かを変えても「審判の日」がずれるだけ。それはそうかも知れない。同じ時間軸なら、ジョンが存在する限りスカイネットも存在するからだ。ジョンとスカイネットは切り離せない。だから今回のシュワちゃんの任務は「スカイネットを阻止すること」ではなく「ジョンを生き延びさせること」だったのだ。シュワちゃんが来たのが核戦争直前だったのも、ジョンたちを何処かのシェルターへ避難させるためだったのだろうから。

結局ジョンはスカイネット誕生も「審判の日」も阻止できなかった。しかしシェルターから生き残りに呼びかける時、これまで情けなく見えたジョンが指導者の顔になる。結局それがジョンの運命なのだろう。本来の運命に戻った時、ジョンも本来の自分になれるのではないか。これは「運命を戻しジョンが本来の自分に戻る話」でもあったと思う。スカイネットと戦う運命こそがジョンを立たせるアイデンティティーなのだろうから。なお、これはあくまでも本作のジョンに関しての考察です。

今作ではサラは既に故人の設定(T1のカイルはサラと会ってないので、サラはカイルとジョンが出会う前に没した可能性が高い。それを考えれば妥当な設定)。スカイネットを開発するのはケイトの父(軍の高官)。世界中のコンピューターがウイルスに侵され機能しなくなったため、開発中のスカイネットでウイルスを除去することになるが、接続され全てを掌握したスカイネットが核戦争を起こす流れ。スカイネットはネットに分散するソフトウエアのため破壊困難という設定にネット時代らしいリアルさと怖さがあり、そこはもっと評価されるべき。

今作には不満な人もいるかもですが、タイムパラドックスを正してくれたり、ネット時代への警鐘も含んでいたり、SFアクションとしては十分な作品だと思います。