ゴジラ2000 ミレニアム

ゴジラ2000 ミレニアム [東宝Blu-ray名作セレクション]

1999年
時間 107分
監督 大河原孝夫

ゴジラが度々現れて破壊活動を繰り返している日本。ゴジラ研究家の篠田はゴジラ予知ネットワークを立ち上げ、ゴジラを追っていた。その頃、鹿島灘沖で巨大な岩塊が発見されるが、岩塊の中身はUFOで、ゴジラを退散させるほどの力を持っていた。UFOはシティ・タワーに取りつき、人間の情報を収集して地球を征服しようとしていた。UFOから怪獣オルガが出現し、再び現れたゴジラとバトルになる。

「ゴジラvsデストロイア」から4年。VSシリーズが一区切りついて休止状態に入っていた日本のゴジラですが、1998年に公開されたローランド・エメリッヒ監督の「GODZILLA」がゴジラになっていなかったため、日本でゴジラが再始動、着ぐるみ特撮の意地を見せました。幼児から児童に成長した息子たちにとっても待ちかねたゴジラとの再会です。

今作のゴジラはVSシリーズとの関連はないようです。見る前はデストロイアのジュニアが成長したゴジラ!?と思ったのですが、VSシリーズとは別世界のゴジラのようで、これも新たなパラレルゴジラワールドになっている様子。今作の世界ではゴジラが度々出現しては暴れているらしい。作中ではゴジラの起源については何も言及されてないので、こういう世界観なんだと思うしかないです。

VSシリーズがシリアスからだんだんエンタメに変化したのを受けてか、今作では改めて怖いゴジラへの原点回帰を目指したようです。確かに今作のゴジラは怖い。とことん破壊神で、人間はゴジラに叶わない。今作に登場の人間たちは、たとえ怪獣映画に人間ドラマは不要だったとしても、あまりにも全員棒すぎる。これはゴジラの前では人間は棒になるしかないんだと言うメッセージではないかと思うほどに棒です(汗。

シリアスで怖いゴジラですが、ゴジラ単体作品ではなく対戦相手がいます。宇宙人の地球侵略と聞くと安っぽい子ども向けのイメージがわくかも知れませんが、さすがにハリウッドGODZILLAの後ですから、そこは大人も見られるように作ってあります。

ミレニアン

UFOに乗っていた宇宙人。長い宇宙旅行に耐えるため量子流体化して肉体を捨てていた。海底で眠っていたが海上に引き上げられて目覚める。

オルガ

ミレニアンがゴジラ細胞のオルガナイザーG1で肉体を再生しようとしたが失敗して怪獣化したもの。

ゴジラ

度々日本に出現して破壊活動を行っている。出自は不明。

<ネタバレ>

今作の人間、みごとに何もしてません(汗。作戦を立てて自衛隊が頑張る描写はあるものの、ゴジラには歯が立たない。今作の人間はゴジラの周りをただウロウロするだけのハエか蚊みたいな存在。なまじ作風がシリアスなだけに篠田に同行する由紀(雑誌記者)のバカッぷりが目立つ。篠田も宇宙人の目的を探れたところでどうしようもなかったし。でもラストを見たらそれも意味があったのかも…という気になる。

宇宙人の描写は良かった。体がないため、人間がキラキラした衣装を着たような安っぽいものにはならず、コンピューターをクラックして人間の情報を収集し、多数のモニターで侵略の意思を伝えるというクールな動きに出る。下手に文章は使わず、単語だけをどーんと出すのがいい。実際に宇宙人が侵略するとしたらこうなるんじゃないかなというリアル感がありました。CGは浮いてましたが…(^^;。

オルガの登場がちょっと遅かったですが、怪獣バトルは迫力ありました。ゴジラの造形もより先鋭になってかっこいい。人間たちの棒さ加減はオルガ戦でいっそう際だってましたが(何もせずに本当に棒のように立ってるだけ)、オルガを倒したゴジラが街を破壊するシーンで幕になった時、今作の真意が分かりました…。

「ゴジラの破壊を止められないラスト」ってこれまでになかったと思う。ある意味画期的だとも思う。つまり、今作の主人公は人間ではなくゴジラだったのだと。災害そのものだったのだと。

これはゴジラを核の象徴から大災害の象徴へと定義し直したことを意味しているのかもしれない。そう考えれば今作のゴジラに特に説明がないのも納得がいきます。

ゴジラ(大災害)の前では人間は何も出来ない。制御も倒すことも出来ない。ただ見ているしかない。だから今作のゴジラは映画が終わっても去らない。そこに居続けて破壊し続ける。災害は1回来て終わりにはならない。何度でも繰り返し訪れる。だから我々に出来ることはゴジラ(災害)を予知し、被害を最小限に収める努力をすることくらいしかない。そんな気持ちにさせてくれたミレニアムゴジラでした。