アイの物語
著者 | 山本 弘 |
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ロボットが人間に物語を聞かせる、という千夜一夜みたいな構成で7つの作品が入ってます。それぞれは単発で書かれた別々の物語なのですが、並べてみると意味を持ってくる構成が面白い。
【宇宙をぼくの手の上に】
作品世界への導入部分ですね。まずは現実からスタートして、仮想空間(インターネット)で遊ぶという概念を理解してもらう、みたいな。個人的には好きな話です。
【ときめきの仮想空間】
ここからSFらしくなってきます。マトリックスみたいに意識も仮想空間に飛ばしてそこで遊べるという。
【ミラーガール】
AI育成の物語。ここでAIが自意識を持つ過程をやってるので、以降の作品を理解する助けになります。
【ブラックホール・ダイバー】
自意識を持ったAIが宇宙船の頭脳として働いている話。完成されたAIと人間の交流。
【正義が正義である世界】
仮想空間もここで完全形に。もはや仮想ではなく、そこに住む人にとってはそこが現実。
【詩音が来た日】
介護アンドロイドの話を通じて描かれる作者のAIに対する考え方。でもそういうことは置いといて純粋に話を楽しむも吉。理想だなあ…。
【アイの物語】
バーチャル世界とAIを組み合わせたロボットの概念が新鮮でした。なるほど、仮想世界でキャラ育成ゲームみたいにAIを育ててから現実世界で体を与える。それで心を持ったアンドロイドが誕生するということですね。ただAIが心(自意識)を持っても、それは人間の持つ心とは異なる、という考え方は共感できます。この辺は自分でも掘り下げてみたい興味深いテーマです。